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「う、嘘よ! 絶対胸だった!」
また怒られる前に、そろそろ冗談は止めておくか。
「うん、嘘。本当は胸でした」
「ほら嘘じゃない」
なぜそこで勝ち誇るんだ。
ふふんっ、と勝ち誇っている凛に俺は――
「さて、じゃあさっきの続きを──」
「いいかげんにしなさいっ!」
「ひでぶっ!!」
我ながらなんとも古い台詞を吐いてしまったぜ。
「さて、冗談はこれくらいにして」
「冗談だったの!?」
「そうだけど」
「ぷっ。あはははっ。なんかもうばっかみたい」
「凛?」
「あたしばっかり緊張したりしちゃってさ。奏ってばいつもと変わらないんだもん。さ、気を取り直して遊びましょ。せっかく遊園地に来たんだもん。もったいないし」
「ああ、そうだな」
「はい」
凛が手を俺に突き出してきた。
な、なにをする気だ凛の奴。
どうせ凛のことだ。俺が手を握ろうとしたりしたら、技の1つでもかける気じゃないだろうな。
「はいって言ってるんだけど」
さらに突き出してくる悪魔の手。
「……はい」
「なによこの手」
「お手?」
「お手じゃないわよ! 手よ手! 手を繋ぐのよ!」
「ああ、手ね。なんだ手か」
「なんだと思ったのよまったく」
恐る恐る凛の手を握った俺は、今度はジェットコースターへ向かうことにした。
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