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俺達は遊園地内のレストランで昼食をとることにした。
遊園地内の食事処はどこも値段が割高なので、バイトもしていない俺は、本当はおごるなんてことをできるほど金銭に余裕はない。ないんだけど金が無くなるより、命が無くなる方がとても恐い……。
「俺は焼きそば。凛は?」
「あたしは──カレーにする」
俺は凛の分も注文を済ませると席を探した。
「あそこの席が空いてるな。凛、行こうぜ」
「うん」
席に着き、ほどなくすると料理が運ばれてきた。
「お、うまそうだ」
「普通じゃない」
……台無しだった……。
割高なうえ、遊園地の入場券も飯の代金も全部おごらされているので、普通の焼きそばでも気持ちは屋台の様なうまい焼きそばを食べる気分を味わいたかったんだけどな。
「いただきます」
凛はそんな俺の気を知りもせず、黙々とカレーを食べ始めた。
「いただきます」
気分もブチ壊しにされたので美味くもなく不味くもない、いたって普通のソース焼きそばを食べることにした。
……これで800円は高いだろ。
「そういや俺達ってまだ何にも乗ってないよな。せっかく遊園地に来たのに手を繋いで怒られてただけで」
沈黙が続いていたので俺が話を振ると。
「仕方ないじゃない。そういう設定なんだから」
「設定!? 今設定とか言ったよな!?」
「なに今更驚いてんのよ」
「今更!? じゃあ凛は知っていたのか!?」
「当たり前じゃない。あたし達は作者の指示に従って仕方なく、で、デートしてるんだから」
衝撃の真事実だった。
そんなまさか……俺達が今こうしているのにはそんな裏事情があったなんて。
「え、まさか今の話し信じてないよね?」
「嘘だったの!?」
「当たり前じゃない」
だよね。よかったー。
「というか凛もあんな冗談とか言うんだな」
冗談にしてはやけに本当ぽかったけどな……
「あ、あたしもたまには冗談の1つくらい言うわよ」
む、なぜそこで目を背ける。
「そんなことより早く食べるわよ。作し──あたしにもプランがあるんだから」
「今作者って言ったよな!? 作者って!」
「い、言ってないわよ! ばっかじゃないの」
「なんで目を背けるんだよ」
「う、うるさいバカ!」
「ぐはぁ!!」
焼きそばが出る!
俺は吐き出しそうになった焼きそばを必死に抑え込み、これ以上の追求は止めた。
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