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手を振りほどかれてしまった。
「お兄ちゃん、結衣はお兄ちゃん大好きだからね!」
「ありがとう結衣」
振りほどかれてしまった手で結衣の頭を撫でてやると、結衣は気持ち良さそうに眼を細めて、はにゃー、と気の抜けた声を出している。
俺たちが通う私立桜蘭高校は、去年校舎を改装した綺麗な学校で、桜並木を通った先にある。
この桜並木と女子の茶色を基調としたブレザーに、チェックのスカートの制服が目当てで入学する生徒が多い。
もちろん、その制服を目当てにしているのは女子だけではなく男子もだ。が、俺は決して制服目当てじゃないんだからねっ!
桜並木を通り抜け、昇降口に入ると2人と別れる。
「じゃ、入学式2人のこと見てるからな」
俺は2人の頭を撫でながら言うと、あれ? 凛のやつ顔が赤いぞ。
「どうした凛。顔が赤いけど」
「か、勘違いしないでよねっ。別に、照れてるわけじゃないんだからねっ!」
「いや、俺は赤いぞとしか言ってないんだけど」
「な──っ!」
ますます赤くなったぞ。大丈夫なのか凛。
「バカっ!」
「うごっ!!」
なんてことしやがる。いきなり腹を殴るなんて。危うくお兄ちゃんはそういうことをされて喜んじゃう性癖に目覚めるところだったぞ。
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