静かな夜に私は願う

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   けれど、彼は頷かなかった。 「気まぐれで結構。僕が意思を持って、ここまで人間の願いを叶えたいと思ったことはない」  私はその返事に対して、返す言葉を用意していなかった。まさかここまで私に固執するとは思ってもみなかったから。 「それに飢えや争い、死というものも僕自身。バランスを崩してしまいかねないから、そう簡単に願いは叶えられない。でもね、君になら僕の一部を預けられる」  そう続ける彼の声は、冗談を言っているようには到底聞こえなかった。 「どうして?」  私は問う。 「君は強いから」  彼が答える。 「私は弱いよ、強くみえるだけ」 「力を持っているという意味じゃない。君の心の強さに惹かれたんだ」 「それは造ってた私。いい服着て立場に合う振る舞いをして、造ってた私だよ。本当の私じゃない」  相手の姿を見ないまま私は否定し彼は肯定しつづけた。終わりの見えない平行線のやりとり。それはそうだ、どちらからしても自らのこと。誰よりも知っている自分のこと。退けという方が間違っている。  彼が似合わない溜め息を吐いたところで会話は止まった。
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