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「それで、君は願うの?」
私は返事が出来なかった。
願えば叶う。この好機を逃せばもう二度と叶わない。いつものように願えばいい、望めばいい、それは簡単なこと。
だけど、私は出来なかった。
「別に身体を奪おうとしてるわけじゃないんだ。好きな時に風になって、好きな時に戻ればいい」
彼は続けた。そうすればどこにだって行けるし、君を捕まえるものもなくなる。自由になれる。
それでも私は答えなかった。
私自身、分からない。ずっと望んできたことなのに。何が私を留めているのだろう。何故私は悩んでいるのだろう。
そういえば、私はいつも悩んでいた。悩み続けてきた。それは何故?
「どうして悩むの?」
いつも最善の選択をしようとしてしまうから。
勿論、常にその選択肢があるとは限らない。どちらかが立てばどちらかが立たなくなる、何かを犠牲にしなければならない時もある。いかに犠牲を抑えるかということも。
私は最善の選択をしたかった。もっと良い選択肢はないか、もっと皆のためになる選択肢はないか。全ては皆のため。父から教わった在り方通りに。
そうだ、私はいつも――
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