静かな夜に私は願う

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   私は部屋を抜け出した。  皆が寝静まるこの時間をいつしか私は楽しむようになっていた。夜警の網をすり抜けて、町の外へ飛び出して、忍び足は駆け足に変わっていく。  いつも感じる真昼のそよ風とは違う、乱暴な風が髪や衣服を乱れさせた。正確には違う。走ればこうなるもの。でも、私はもう少し違う表現をしてみたい。  風は私だ。時に優しく、時に激しく、皆を包み込む。道を指し示し、火を煽(あお)る。風は私だ。  私がここを通り抜けること。風がここを吹き抜けること。二つが違うのは知っている。だけど私はその風に、ならなければならない。そのためなら、痛みや束縛は厭(いと)わない。  私を乱すこの風も、その〝痛み〟だというのなら、喜んでこの身に受けよう。 「吾は帝王也(なり)」
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