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「みんなはお姉ちゃんが好きだからそう思ってるんだよ」
少年は幼い声で呟いた。
「好きだって勘違いしてるのよ、それは。人っていうものは集まると流されちゃうものだから。良くないものも良く見える」
それは知らない人に限った話。何も知らない人がそのものについて良し悪しを定めるなんて難しいから、基準として周りを見る。だから集団の意志に流されやすい。
ただ、知識を持つ人には通用しない。私は上に立つ人間ではないとそんな人達は考えるだろう。
少なくとも、そう私は思う。
「そうかな」
彼はそう繰り返した。
「僕は好きだよ? お姉ちゃんのこと」
こんな幼い子供に慰められてるなんて。いや、この子は純粋に私を好いてくれているのかもしれない。俯きがちの考えは私の悪い癖だ。
素直になろう。私は肩の力を抜いて笑った。
「ありがとう」
えへへ、と彼の笑い声が聞こえる。
◇
かさかさと騒ぐ草原が波打ち、再びそれだけが私達を包み込んだ。見えるのは満天の星空。聞こえるのは草の音。
こんなにも世界は広くて、私はその中にぽつんといるだけ。それなのに、その世界の一部分を仕切る立場にいる。
こんなにも世界は広いのに、大勢の人の中でどうして私がここにいるのだろう。
ふと一人きりだと思った。
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