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唐揚げを噛むのを中止して、じっと息を潜めた。跳び箱の中でも入口から遠い方に下がり、段と段の隙間から外を窺う。
ドアを閉め、入ってきた人物は星野だった。今日の朝のようないつもの様子とは違い、ため息をついて重苦しく暗い様子だった。
彼は制服のネクタイを外すと、僕からは見えない方に移動してしまった。ここぞとばかりに唐揚げを噛むのを再開し、瞬く間に飲み込んだ。おいしかった。
星野が移動したほうから、きぬ擦れの音と、椅子か何かを動かすような音が聞こえたと思ったら、がたっ、と何か固いものが倒れる音がして、静かになった。
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