苦いおかず

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僕はそれを見た瞬間、何も考えられなくなって身動きもできなくなった。 我に帰って、急いで星野を降ろした。彼は真っ青な顔をして動かない。 「星野!おい!星野!」 僕は無我夢中で、名前を呼びながら頬を叩きまくった。 願いが通じたのか、星野は意識を取り戻し、目を開けた。彼は必死な僕を見て不思議そうな顔をし、身体を起こした。僕は安堵の息を漏らす。 「なんで、御手洗がここに……」 そう聞かれ僕は答えに戸惑ったけど、面倒なので正直に言うことにした。 「僕、いつもここの跳び箱の中で弁当食べてるんだ」 「へえ、面白いな」 星野はにっこりと悪戯っ子みたいに笑った。今さっき自殺未遂を起こした人間とは思えない明るい笑顔だった。そして苦笑いしながら続ける。 「ありがとう、助けてくれて」 「あ……ああ」 自殺未遂を起こした理由を聞きたいが、聞いていいものかわからないので、曖昧な返事になってしまった。
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