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太陽の日差しが眩しい。
まだ7月だと言うのに、ジリジリと肌を焦がす様に照りつける。
遠くの道路では陽炎もできて、路面温度の高さを伺わせる。
「てんちゃん。帽子被らなくても大丈夫か?」
「大丈夫~♪」
そんな暑さの中でも、てんちゃんは元気にスキップなんてしながら、暑さを跳ね返していた。
さすが、子供は風の子。俺なんて、すぐに家に入って涼みたいくらいなのに。
香須美の家までそんなに距離はなかったはずだが、この時は何故か憂鬱になる程長く感じた。
その為か、ついつい足早になってしまう。何度てんちゃんに速いと言われてスピードを落としたコトか。
そんな紆余曲折を乗り越えて、ようやく孔寺蓮家に辿り着く。
こんな暑い日でも、揺らぐコトなく、堂々たる佇まいの屋敷。
門に設置されていた監視カメラが俺達を捉える。そしてしばらくして出てきたのが、以前香須美を出迎えた執事さん。
「稲葉様、お待ちしておりました」
暑い中ご苦労様です。
そんな気持ちを込めてペコリと会釈をすると、まさかの会釈を返されたので恥ずかしくなった。
さて、敷地内に入れば、屋敷の全貌が明らかになる。
芝生の中にコンクリートが敷かれ、玄関へと誘われる。
その所々に噴水があったりして、まるで俺達の住む世界とは別世界。
そして屋敷。外装が赤レンガ作りのシンプルな屋敷。しかしその大きさときたら、ついつい奥まで首を伸ばして眺めてしまう程。玄関扉がデカイというだけで、どれ程の大きさなのかは想像つくコトだろうと思う。
そして、その屋敷とはまた別に区切られた区間がある。
洋風な屋敷と対照的な、レンガ屋根で白壁の、昔ながらを思い起こさせる古風な道場。
そこに1人の女性を発見した。
てんちゃんに、先に屋敷に行っている様に伝え、俺は寄り道をする。
とりあえず挨拶はしておいた方がいいだろうと思ってのコトだ。
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