赤目一族のお屋敷で

22/22
7825人が本棚に入れています
本棚に追加
/579ページ
「?変なの」 そう呟いて、香須美は特に気にする様子もなく、また向き直って歩き出す。 その後ろ姿を見つめる香菜弥さんの表情を見ると、またさっきみたいに笑顔が消えていた。 「…香菜弥さん?」 思わず聞いてしまう。 少し目を細くして、まるでどこか寂しげな感じ。その表情を見て、何か裏があるんじゃないだろうかと思ってしまった。 香須美のあのフレーズを聞いた瞬間からだったから、昔が何か関係しているのではないだろうか。 「………なんだよ」 「っ!!」 背筋がゾワッと震え上がるのがわかった。香菜弥さんが俺を見据えた時に、鋭く、冷たい眼差しが俺を突き刺す。 それだけで体が動かなくなった。無言の圧力。その、今にも誰かを殺してしまいそうなくらい暗い瞳は、何も聞くなと言っている様だった。 「……いや、なんでも」 「…………早く追いかけろよ。香須美に怒られるぞ」 前に向かって指を差す香菜弥さん。その先には、いつの間にか遠くなってしまった香須美。 モタモタしてては、ホントに怒られかねない。 「あ、はい。……って、香菜弥さんは?」 駆け出した時に、香菜弥さんだけ動く様子がない。俺は振り返り、尋ねる。 「アタイはいいや。風呂上がりで眠くなってきたしな。ふわぁ~あ……。じゃあな」 眠そうに、大きなアクビをする香菜弥さん。それと同時に、またさっきの黒い瞳は消えていた。俺の返事を待つコトもなく、その姿は屋敷に消えていった。 ……全く掴めない人。香須美に何を見て、何を思っているのか分からない。 他人の俺が関与するコトではないのは分かっていても、少しだけ香菜弥と言う人の過去が気になった瞬間だった。
/579ページ

最初のコメントを投稿しよう!