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「とりあえずてんちゃんとも話したいから、部屋に入れてくれよ」
別に俺は構わない。ただ由香莉が勝手に決めたコトだと、色々と面倒になりそうだったからだ。
由香莉はそんな子ではないと分かってはいるが、一応確認の為。
そう思い、扉に手を掛けて部屋に入ろうと試みる。
「あ、あれ……」
しかし、何かで押さえつけられているかの様に、扉は開かない。
直ぐに犯人は分かった。由香莉がガッチリと扉を押さえて、開けない様にしていたのだ。その証拠に、扉に手を掛けてギュッと握りしめている。
「……おい。何やってる」
「お、お前は部屋に入るな!」
どういうコトなの……。
香須美の時とは打って代わり、まるで自分の部屋を見てほしくないかの様な反応。
そこでようやく把握した。香須美の時で鈍っていたが、これが普通の、年頃の女の子の反応なのだ。
まぁ、部屋を見られたくないのは誰でも一緒か。
「分かったから、てんちゃんと話させてくれよ」
「……分かった」
由香莉はムスッとしながら承諾して、一旦扉を閉める。
どんだけ気にくわないんだよ……。
数秒して、また扉が開く。今度は由香莉ではなく、小さな背丈の女の子が顔を覗かせた。サイドポニーが弾む。
「よう、てんちゃん」
「天華、由香莉お姉ちゃん家に泊まる!!」
しっかり訓練されていた。視線を交わして、最初の一言がそれだった。
どうやらお互いの同意ができているらしい。そうと分かれば、俺がとやかく言うコトではないな。
………………。
いや、待て……。だとすると、ランドセルやら着替えやら諸々を持って来なくちゃいけないじゃないか!
つまり往復するのか……。かなりめんどくさいコトになったな……。
「はぁ……分かったよ。泊まりたいんだな?」
「うんっ!」
「迷惑かけちゃダメだぞ?」
「うんっ!」
確認の質問に、満面の笑みで答えるてんちゃん。
いいんだ………。てんちゃんの笑顔が見れるなら、俺の苦労なんて惜しくはないのさ………!
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