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外に出る。
ようやく少し傾き始めた太陽が、にわかに色をオレンジに染めていこうかという頃であった。それでも外は暑い。
団扇が手元にあれば、すぐにでも扇ぎたい位だ。
「じゃあ、晩御飯食べたらまた来るわ」
「別に来なくてもいい。つーか来んな」
「…………………」
あれぇ~?なんかさっき部屋で話した時と全く対応が違うんだが、これいかに。
あからさまにトゲのある言葉に加え、さっきから俺と目を合わせようとしない香須美。
俺………なんかしたか?
とは言え、香須美にツンツンされたからと言って、後から来ない訳にもいかないので、少し疑問を感じながらも孔寺蓮家を後にするコトにした。
「香須美さん、機嫌悪そうでしたけど………何かあったんですか?」
「さぁ、俺にもサッパリ」
門までは志乃ちゃんと一緒に行くコトになる。相変わらず腕にしがみつかれたまま。汗が滲み出しているというのに、嫌じゃないんだろうか。
「てか、由香莉も薄情だな。志乃ちゃんが帰るのに、見送りしないなんて」
「あっ、いいんです別に。てんちゃんと楽しそうにしてたし、邪魔しちゃいけないと思って私から断ったんです」
どうやら、志乃ちゃんもてんちゃんとは馴染めた様だ。嬉しそうに話す横顔を見て安心する。
「志乃ちゃんは泊まっていかないのか?」
「泊まりたいですけど、私の家は門限が厳しいので……。あっ、ほら、もう迎えが来てるでしょ?」
志乃ちゃんのか細い指が門を差す。その向こう側に黒塗りのセダン、見るからに高級車が止まっている。
その手前に、1人のスーツを着た男性が立っていた。見るからに長身。1,9m弱はあるんじゃないだろうかという位にデカイ。
門を開けてくれた執事さんに軽く会釈をして門をくぐる。そして、近くで見れば尚更に威圧感がハンパない。
スーツを着ているせいかスラッとして見えるが、その上からでも体がガッシリとしているのが分かる。
「志乃、誰だ」
長身で銀髪の男性が話しかける。前髪が長くて表情は読み取れないが、口調は淡々として、冷たい印象を受ける。
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