7825人が本棚に入れています
本棚に追加
そして現刻、夜の8時。
自宅に帰ってから軽く晩御飯を食べて、てんちゃんの、孔寺蓮家お泊まり会の準備を完了した時刻である。
「夜道は気を付けてね、いっちー」
幼馴染みの愛華(あいか)に見送られ、夜の町へと繰り出す。着替えの入った手提げ鞄とランドセルを持って。
昼に快晴だったのは夜になっても変わらず。雲1つない、銀色の月が眩しい夜空だった。
街灯なんてなくても、月の光だけで歩けそうなくらい。
夏の夜は好きだ。
どこからともなく鈴虫の鳴き声がする。
風鈴と似たもので、鈴の音色が夏の暑さを冷ましていく様だからだ。
………………。
さて、話しは変わって。
今俺が歩いている道には誰1人として歩いていない。辺りを見渡しても人の影はない。
それなのに、自分の足跡に混じって他の足跡が聞こえてくるのだ。
「……………………」
自然と早足になる。
言い忘れていたが、俺はホラーが大嫌いだ。他に誰もいないのに足音が聞こえてくるなんて、ホラー以外のなんでもない。
愛華について来てもらえばよかった…………。
そんな冷や汗ダラダラ、心臓バクバク状態の俺は、我慢できずに振り返る。
「だ、誰だっ!!」
……………………。
包む静寂。やはり誰もいない。
大声を出してしまった恥ずかしさで、顔が赤くなる。
やはり勘違いか……。
最初のコメントを投稿しよう!