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力が強い。覆い被さる相手を、ランドセルを押し上げて引き剥がそうとしても、力が強くてそれができない。
そろそろ余裕がなくなってきた。どうやって相手を振り切ろうか脳を回転させていると、相手が静かに呟いた。
「孔寺蓮 香須美に近づくな。」
瞬間、頭が真っ白になる。
どういうコトだ?コイツは香須美を知っている?
もう何が何だか意味が分からない。ていうかコイツは誰なのかすら分からない。
「さもなくば、殺す」
こ、殺すって……。
考える隙など、相手は与えてはくれはしない。今度は左手から新たなナイフを取り出し、振り上げる。
俺の手元には防ぐ物がない。
汗が噴き出す。さすがに死を覚悟せざるを得ない。
振り下ろされるナイフ。
咄嗟に顔を背ける。というか、勝手に顔が動いたのだ。万歳俺の反射神経!
ガキンと甲高い音を立てながら、ナイフは地面に打ち付けられる。
「っ!?」
一瞬相手が怯む。その隙を狙い、下から腹部を蹴り上げる。火事場の馬鹿力とはこのコト。思いの他ダメージを与えた様で、相手は腹部を押さえながら俺から離れ、一歩後退する。
ここぞとばかりに、俺は立ち上がって逃げる。
とりあえず警察…!……はこの近くにはない。ならどうする!?
「……いた」
1人だけいるじゃないか……!警察よりも頼りになる人が!
丁度進行方向は目的地に向かっている。そこまで逃げ切ればあるいは……。
「…………………」
当然相手も追いかけてくる訳で。無言で追いかけられる程、怖いものはない。
一瞬振り向く。やっぱり追いかけてきていた。
「こっち来んなぁぁぁぁぁ!!」
叫びながら走る、逃げる。
内心、泣きたい。めっちゃ泣きたい。まさか自分がこんな目に合うなんて、平和ボケした脳は考えてもいなかったから。
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