Acid Marionette

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「かっ、香菜弥さん………!」 俺を助けたのは言わずもがな、香菜弥さんだった。さっき見た服装と変わらず、相変わらずの黒のタンクトップとショートパンツ。夏の夜にはとても涼しげな格好だった。 「なーに泣きそうな顔してんだ」 俺の方に振り向き、眉を潜める香菜弥さん。ていうか、あるコトないコト言われている。別に泣いてなんかないぞ!ホントだぞ! しかし、安心したのは確か。俺は力が抜けて、その場にヘタレ込んだ。 「立てなくなったのか?腰抜けめ」 「仕方ないでしょ……。こんな目に遭うなんて―――――」 差し出された手を掴もうと香菜弥さんを見上げる。瞬間、俺は言葉を失った。 視界に飛び込んでくる。吹き飛ばしたはずの相手が、香菜弥さんに向かって刃を突き立てて切りかかってくるだ。 防ごうにも、今の俺では間に合わない。 「香菜弥さん後ろ―――!」 しかし杞憂に終わった。 香菜弥さんは涼しい顔をしたまま、俺が言い切る前に顔をクイッと横に傾ける。 まるでスローモーションの様に、髪が靡き、ナイフがすぐ横を掠めていく動作が見える様だった。 一瞬の出来事に、俺は目を奪われる。 香菜弥さんはすり抜けたその腕を掴み、そのまま背負い投げ。相手を地面に叩きつけた。 「かはっ…!!」 相手は呻き声を上げる。 「蹴るまでもねぇよっ!」 香菜弥さんは追い討ちをかける。その反動で浮き上がった相手に対して反転し、蹴り飛ばす。 再び、地面を数回転げる相手。 蹴ってるし………。 圧倒的。表情1つ変えずに軽く相手を軽くいなすその姿は、まさに戦いの女神。 「おいおい物騒だな。ていうか、コイツ誰?お前の知り合いか?」 「違いますよ……。急に襲われたんです」 もし俺の知り合いだったら、今までの一連のやり取りは一体何だと言うんだ……。 「孔寺蓮……香菜弥………!!」 腹を押さえながらヨロッと立ち上がり、唸るように低い声で香菜弥さんの名を呼ぶ仮面。 相手は、香菜弥さんのコトも知ってるみたいだ。
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