7825人が本棚に入れています
本棚に追加
「――という訳なんだ」
そして今。俺は孔寺蓮家のリビングにいる。
その場には孔寺蓮家を含め、もちろんてんちゃんもいた。由香莉の膝の上に座って、オレンジジュースを啜っている。
「ケガはなかったの?」
ソファーで、隣に座る香須美が珍しく心配してくれた。眉を八の字に垂らし、俺の体を見てくる。
ちょっと恥ずかしかった。
「ケガはなかったけど、その………」
その例のランドセルを取り出す。香菜弥さん以外は、皆頭にハテナを浮かべる。
内心、俺は冷や汗ダラダラ。隠し通せる訳がない。というコトは自らの自白しかないという結論に達した。
「ランドセル………穴空いちゃった…」
「「「……………………」」」
ナイフで刺された箇所を見せる。一瞬で辺りが静まり返る。
皆ポカーンと口を開けてランドセルを見つめる。振り子時計の、重苦しい分針が動く音が響いた。
「て、天華のランドセル……グスッ……。…りんちゃんに……うっく……買ってもらったのに……」
「ててててんちゃん!!ご、ごめん!!新しいの買うから!な?」
その、見るも無惨なランドセルを見たてんちゃんの目尻に、ジンワリと涙が浮かぶ。
必死に涙を堪えて我慢している様だが、こりゃパターン入ったね。今にも涙を貯めているダムが決壊しそうだ。
「うぇぇぇぇ~~ん!!天華のランドセルーーー!!」
あっけなく倒壊した。口を大きく開けて、ボロボロと涙を溢しながら由香莉にしがみつくてんちゃん。
「この鬼。悪魔。人でなし」
「おまっ!!話聞いてたか!?」
「そーだそーだ!」
「ちょっ!香菜弥さん便乗すんなよ!」
由香莉がてんちゃんを宥めながら、ジト目で俺をけなす。そしてその後ろで、ソファーに顔半分を隠しながら腕を上げて、由香莉に続く香菜弥さん。
何なのこのノリ……。
最初のコメントを投稿しよう!