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「冗談だよ、冗談。こっちの責任だし、ランドセルはウチが弁償する。それでいいか?」
「…………………」
意外にアッサリ。香菜弥さんが即決で話を締めた。
それのせいもあってか、半分気が抜けてしまったところもあって。ちょっと申し訳ない感情が出てくる。
「だって……りんちゃんのランドセルはぁ……?」
涙ぐみながら香菜弥さんを見上げるてんちゃん。ランドセルをギュッと抱き締めながら、ウルウルと必殺の上目使い。
「いいか?それはもう使えない。ダチに笑われてもいいのか?だから諦めろ」
しかしそれに揺るぐコトなく、香菜弥さんはてんちゃんと同じ目線になって諭す。本邦初公開、香菜弥さんとてんちゃんの初の絡みだ。
「うぇぇぇ~~ん!!嫌だよぉぉぉ~~!!」
「だぁぁぁぁ!!聞き分けのないガキだな!由香莉、黙らせろ!」
「は、はいっ……」
絡み終了。
怒りマークを浮かべて放棄する。香菜弥さんに一命を任された由香莉は、必死にてんちゃんをあやす。が、泣き止む様子はない。
娘との絡みの時とはまるで真逆。それを見れば、香菜弥さんは子供好きかと思ってたんだが……。検討違いだった様だ。
「母さん、もうちょっと言い方あるんじゃないの?相手は子供なのよ?その……てんちゃん、可哀想よ」
てんちゃんに背を向け、冷蔵庫でビールを取り出す香菜弥さんに、香須美が問い詰める。
「が、ガキは苦手なんだよ……」
飲みかけたビールを口から離し、気まずそうに汗をタラリ。
「よく言うわ……」
香須美の呆れ顔。確かに、娘達への対応を見れば、天と地程の違いがある。
要は親バカってコトだな……。
「とにかく、責めるなら穴開けたヤツに言えよ。アタイにはどうしようもない。………飲むか?」
「飲まない」
「そうか」
娘に酒の勧めを断られ、少し残念そうにビールを一口。
そう言えば思い出したが、さっきの仮面の女性について聞かなきゃいけないコトがあるんだった。……香須美に関係があるみたいだし。
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