Acid Marionette

19/19
前へ
/579ページ
次へ
「そうじゃないの。その……嬉しかった。心配してくれて」 頬を染めて、やっぱり俺と目を合わせない香須美。自室のドアを見つめ、呟く。 「でも、あれのコトは……あんたにはまだ話せない」 「解決するコトなのか?」 話せないと言うコトは、逆に聞かれたくないと言うコト。ならこれ以上、首を突っ込むのをやめよう。ただ、1秒でも早くの解決を。 「分からない……。でも私はっ――!」 声のトーンが上がったかと思うと、バッと俺の方を向き、やっと目が合う。しかし言いかけたところで、香須美は何かに気づいた様に顔を真っ赤にして口を紡ぐ。 目を皿の様に丸くして、キュッと口を一文字に結ぶ。 俺の頭にはハテナが浮かぶ。そして待つは、香須美の次の言葉。 「なんでもないわよッ!!」 「あ、あぁそう…」 ガクッと気が抜けた。目をグルグルとさせた香須美は叫び散らす。いや、話したくないんならいいけどさ……。 「あ、明日も学校なんだから早く寝なさいよね!!ふんっ!!」 「………………」 大きな音を立てて、ドアを強引に閉める香須美。取り残された俺。 あれ……?俺、怒られてるのか?少しの理不尽さを感じながら、俺もドアノブに手をかける。明日は早い。 「あ…………」 すると、静かに香須美の部屋のドアがまた開く。 小さな声に気づく。振り向けば、モジモジと顔を半分だけ覗かせながら、俺の様子を伺う香須美だった。 「……どした?」 また何か言われるのかと思うと、少しゲンナリする。 「そ、その………おやすみ……」 そう静かに呟いた後、イソイソとゆっくりドアを閉める。 包む沈黙。また廊下に取り残された。しかし今度は何故か余韻が残る。なんだろうこのムズムズする感じは……。 「……おやすみ」 しかしそんなコトを考えるよりも、俺の中では眠さが先行するみたいだ。誰もいなくなった廊下に俺も呟いて部屋に入る。 明日も早い
/579ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7825人が本棚に入れています
本棚に追加