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「そうじゃないの。その……嬉しかった。心配してくれて」
頬を染めて、やっぱり俺と目を合わせない香須美。自室のドアを見つめ、呟く。
「でも、あれのコトは……あんたにはまだ話せない」
「解決するコトなのか?」
話せないと言うコトは、逆に聞かれたくないと言うコト。ならこれ以上、首を突っ込むのをやめよう。ただ、1秒でも早くの解決を。
「分からない……。でも私はっ――!」
声のトーンが上がったかと思うと、バッと俺の方を向き、やっと目が合う。しかし言いかけたところで、香須美は何かに気づいた様に顔を真っ赤にして口を紡ぐ。
目を皿の様に丸くして、キュッと口を一文字に結ぶ。
俺の頭にはハテナが浮かぶ。そして待つは、香須美の次の言葉。
「なんでもないわよッ!!」
「あ、あぁそう…」
ガクッと気が抜けた。目をグルグルとさせた香須美は叫び散らす。いや、話したくないんならいいけどさ……。
「あ、明日も学校なんだから早く寝なさいよね!!ふんっ!!」
「………………」
大きな音を立てて、ドアを強引に閉める香須美。取り残された俺。
あれ……?俺、怒られてるのか?少しの理不尽さを感じながら、俺もドアノブに手をかける。明日は早い。
「あ…………」
すると、静かに香須美の部屋のドアがまた開く。
小さな声に気づく。振り向けば、モジモジと顔を半分だけ覗かせながら、俺の様子を伺う香須美だった。
「……どした?」
また何か言われるのかと思うと、少しゲンナリする。
「そ、その………おやすみ……」
そう静かに呟いた後、イソイソとゆっくりドアを閉める。
包む沈黙。また廊下に取り残された。しかし今度は何故か余韻が残る。なんだろうこのムズムズする感じは……。
「……おやすみ」
しかしそんなコトを考えるよりも、俺の中では眠さが先行するみたいだ。誰もいなくなった廊下に俺も呟いて部屋に入る。
明日も早い
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