覇天島殺人事件

プロローグ①

覇天６年４月29日(火)

朝から晴天に恵まれたＧＷ初日、６人の男女を乗せたチャーター船は瀬戸内海に浮かぶ、地図にも載らないような名もない小さな島を目指していた。

狭い甲板の上ではＴシャツにデニムという軽装の女性が陽射しを浴びて開放感たっぷりで気持ち良さそうに大きく体を反らしている。年格好からすると学生であろうか。

｢ん～、風が気持ちいい。それに天気もいいし｣

｢夜叉モンキーさん、そこ手すりが低いですから気をつけないと危ないですよ｣

そう注意するのはまだ子供と大人が同居した感がある少年だ。他のメンバーにも共通点が見られそうにない。傍から見ても何の集団なのかはおよそ見当もつかないだろう。

飛狼、竜聖、舞紗、漆黒の戦士、コタリン将軍、夜叉モンキーと名乗った６人は携帯ゲームサイト『覇天』を通じて知り合った仲間だ。因みに漆黒の戦士は毎月その名を変え、４月は夜桜の戦士と名乗っている。

ゲーム内では同盟と呼ばれるグループがあるが、６人はそれぞれ所属する同盟も違う。強いて共通点を挙げるとすれば同盟での立場が盟主かそれに準じた立場だということくらいだろうか。