第九章「消失」

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「じゃあ助かるんですね!?」 興奮して声を上げる裕也。 その姿は、いつもの彼らしくなかった。 「ああ…。ただ、早いとこ脱出しないとな。此処から出ないと、本格的な治療が出来ない」 「それと、綾香の傷は…?」 「私は大丈夫。これは此処に連れてこられた時の傷だから」 腕を押さえながら答える綾香。 「なら良かった…」 そう言いながら智久は、リリーへと話し掛けようとする。 しかし、リリーの姿が見当たらなかった。 「……リリーは何処に行った?」 その言葉に全員が周りを見渡すが、何処にもいない。 「さっきまでは私の隣に居たんだけど…」 綾香が不思議そうに言う。 そんな中、智久は悔やんでいた。 自分の憶測が、正しかったこと。 それを直ぐに告げなかったことを…。
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