第十章「慟哭の様な雨に打たれた日」

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ケネスの待つ場所は、此処から1kmほど離れた港。 智久は全速力で走った。 時折、闇に紛れた梟が低い声で鳴く。 それすらも励ましの言葉の様に、強く地面を蹴った。 雲に遮られた月光に照らされ、目標であった港が姿を現す。 智久は慎重にケネスの影を探した。 生臭さを含む潮風が、流れ出る汗を冷やす。 それが何故か心地良く、今の気分を払拭してくれた。 「永宮くん……だね?」 不意に背後から声を掛けられる。 気配を感じなかった智久は、肩を大きく上下させ振り向いた。
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