第十章「慟哭の様な雨に打たれた日」

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船ではケネスと同室だったが、別に嫌では無かった。 彼は聞き上手に加え、必要以上の事を詮索しなかったから。 だからこそ、智久の口も心なしか緩くなる。 「…という訳です」 気付けば自分の全てを打ち明けていた。 理由は単純だ。 純粋に彼が尊敬や信頼に値する人間だったからだろう。 彼も裏社会に生きる人間だ。 しかし、それによって卑屈になる事も、傲慢になる事も無い。 毅然とした立ち振る舞いに、智久は一種の感動を覚えていた。 全てを打ち明けた後、ケネスは小さく、けれども力強く呟く。 「your'brave child」 その言葉は、いつまでも耳に響き渡っていた。
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