第十章「慟哭の様な雨に打たれた日」

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「人は何かを失って、何かを得る…」 雨と風の轟音の中、その声だけは消えずに響いた。 「辛かっただろう。友人の死が…」 ケネスは空を見上げる。 「悔しかっただろう。自分の無力が…」 つられて智久も暗い空を見上げた。 「憎かっただろう。全てを奪った男が…」 相変わらず降り続ける雨が、智久の"ソレ"を覆い隠す。 「そして君は何を得た……」 ケネスの言葉は、答えを求めない問い掛けだった。 そして心には、彼らの姿が浮かぶ。 「それが人間だ………」 隠しきれなくなった涙が、雨に混じり滴り落ちる。 心にのしかかっていた重荷と共に…。
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