第十七章「犠牲」

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部屋には無数の薬品が並んでいたが、一つだけ厳重に保管されている。 夜深の言葉を完全には覚えていなかった榊原も、すぐにワクチンだと気づく。 「…ふぅ。手間を掛けさせおって」 其処で榊原の脳裏に、ある憶測が過る。 リリー同様、夜深も裏切る為に此処へ向かわせたのでは?と。 行きと同じスピードで引き返す榊原。 表情は歪んでいる。 「………!!」 扉を開けた先に映ったのは…。 先程と何ら変わらぬ光景。 夜深は呑気に紅茶を啜り、戸塚とリリーは後ろで手枷を嵌め座っている。 「ワクチンはあったかい?」 嫌味ったらしく尋ねる夜深。 「ああ………」 気疲れしたのか、少しも反論せず椅子に腰掛けた。
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