第参章「愛しく哀しい地」

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「まあ彼女の事は後で考えるとして、一つ気になる事があるんですよ」 「気になる事…ですか?」 智久は首を傾げ、色々な事を考える。 しかし答えは浮かんでこない。 「何ですか?その、気になる事って…」 「ソレですよ、ソレ」 戸塚は智久を指差し、苦笑いを浮かべる。 「…ソレ?」 慌てて自分の周辺を確かめるが、別段気になる事は無い。 「話し方ですよ。…どうして急に敬語なんですか?」 その言葉に、智久は成る程と言う顔を浮かべ口を開く。 「…ああ。そんな事でしたか」 「理由としては、戸塚さんが目上の人間として値する人だからですよ」 此方も苦笑いで話し続ける。 「…というと?」 「俺の中では年上と目上は別物なんですよ。だから最初は戸塚さんに敬語を使わなかったんです。でも話してみて、戸塚さんは目上の人だなって…」 戸塚は、やや恥ずかしそうに笑う。 そんな傍ら、リリーは相変わらず日本のパンフレットを読み漁っていた…。
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