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「…智久。君の追い求めた幸せは、この中にある」
ケネスの言葉に頷き、智久は大きく息をしながら、その扉に手を掛ける。
あの頃と変わらず、立て付けが悪い扉は軽い音を伴い開かれた。
「完全に遅刻だぜ、…智久」
教壇の前に立つ親友は、あの日と変わらず微笑んでいる。
「…悪い」
声を振り絞り謝る智久。
堪えていた涙が流れ落ちた。
「早く入れよ。俺が大事な話をするんだから」
親友…。裕太の瞳も、涙で潤んでいる。
「お帰り、智久」
奈月が微笑んで手を伸ばす。
それを優しく掴んだ。
「もっと早く会いたかったんだけどな。全てが終わるまで待てって言われてな」
良樹が夜深を少しだけ見ながら言う。
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