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屋上。
まだ夜の風は少し冷たく、夜深の頬を冷やしながらすり抜ける。
「…此処に居たのか」
突然の声に振り向くと、二本の缶コーヒーを持つケネスが居た。
「此れで僕のゲームは終わりだ。…ありがとう、ケネス」
コーヒーを受け取りながら微笑む夜深。
「それは此のコーヒーへの礼かい?」
意地悪く笑うケネス。
「そういう事にしておくよ」
「素直じゃないな」
暫くの間、二人は静かに空を見上げていた。
「…彼らの元へ行かないのかい?」
その静寂を、ケネスの問いかけが終わらせる。
「僕は、コーヒーを飲むならブラックなんだ」
「どんな物とも混ざらない、そんな味が好きでね」
口を挟まず聞き入るケネスを横目に、夜深は話を続ける。
「…僕も同じさ。一人で居る事で、本来の僕を保っていられる」
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