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「だから僕は一人で良いんだ」
悲しげに響く声。
それは春を待つ冬の風に似ていた。
「確かにブラックは良い。だが、砂糖やミルクの混ざったコーヒーも私は好きだ」
そう言い残し、ケネスは去っていく。
夜深はケネスの後ろ姿を見つめて呟く。
「そうかもね。…けど、僕には甘すぎるんだ」
そして扉へと歩き出す。
しかし、夜深がノブに手を掛ける前に扉を開いた。
「なら自分で苦くするんだな」
其処には、苦笑う智久の姿があった。
「…立ち聞きは悪趣味だよ」
「悪趣味なのはお互い様だろ?」
二人は少しだけ笑い合った。
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