第参章「愛しく哀しい地」

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大きなシャッターが閉じると同時に、一同は車外へと降りる。 「此処は永宮くんやリリーさんを含めて、七人しか居ません。使ってるのも、三階の一室だけです」 地下の駐車場からエレベーターで三階へと向かう道中、戸塚が様々な情報を話してくれた。 ―――― 「此処です」 智久達の目の前には、薄水色をした鉄製の扉。 「どうして何も書かれてないの?」 リリーが不思議そうに戸塚の顔を覗き込む。 「…わざわざ自分達の本拠地をバラさなくても良いでしょう?」 その言葉に納得したのか、リリーはパンフレットへと視線を戻す。 それを見た智久が溜め息を吐きながら言った。 「…リリー。いい加減、日本語で話せよ」 それを聞いたリリーと戸塚は目を丸くした。 「ちょっ、私は日本語は……」 リリーの言葉の途中で、智久がパンフレットを指差す。 「お前が読んでるページ、…日本語だぞ?」 慌ててパンフレットを隠すが、やがて観念したのか、諦めた様に語り始めた。
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