第壱章「出逢い」

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明るく賑わう室内。 その空間には狂喜の声と、悲痛の声が入り交じっていた。 「……随分とツいてるのね」 隣に座る日本人男性に、囁く様に語りかけるブロンド美女。 「…………」 男は気に留めていないのか、黙ってテーブルを見つめている。 サングラスに隠された瞳からは、感情を読み取れない。 「あら、ツレないのね。……あ、ちょっと。シャンパンを二杯頂戴」 せわしなく歩くボーイを呼び止め、慣れた口振りでシャンパンをオーダーする女性。 やがてボーイが、二杯のシャンパンを運んで来た。 「ありがとう。……はい。私の名前はリリアよ。リリーって呼んでね。貴方は?」 片方のグラスを男に差し出し、名前を尋ねるリリー。 「……永宮智久だ」 そう言い、手渡されたシャンパンを一口で飲みきった。
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