第参章「愛しく哀しい地」

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「裕也!?」 智久の視線の先には、金髪に近い髪色をした青年が立っている。 「…智久さん!!」 親友と瓜二つの姿。 御津裕太を思い出させる青年は、彼の弟。 「何で、裕也が…」 懐かしさと共に込み上げる罪悪感。 智久は無意識に目を逸らした。 「永宮くん…」 肩に手を添える戸塚。 その目は、どこか優しげだった。 「智久さん…。お久しぶりです」 悲しげに手を差し出す裕也。 迷いながらも、その手を握った。 「…すまなかった」 絞り出した声は、悔しさや悲しさを伴い、微かに震えている。 「あなたは悪くないです…。むしろ、僕はお礼を言いたかった。兄を…、兄達を助ける為に必死になってくれた…」 その言葉に、智久は堪えていた涙を溢れさせた。
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