第参章「愛しく哀しい地」

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裕也は智久を信じていた。 幼い頃から、本当の兄の様に接してくれていた智久を。 無実だと証明したい。 そんな想いから、様々な情報を調べていた。 そんな裕也を戸塚が見つけ、今回の件に協力を仰いだのだ。 「永宮くんの知り合いが一人でも居た方が、此方も動きやすいですからね…」 事の経緯を知った智久は、複雑な想いを感じていた。 「裕也…。お前が協力してくれるのは心強い。…でも、降りてくれないか?」 「どうし…」 裕也は言いかけた言葉を飲み込んだ。 智久の気持ちが解ったから。 「僕を巻き込みたく無いんですよね…」 弱々しく発せられた言葉に、黙って頷く智久。 「……でも、僕は続けます!!」 何かを言おうとする智久だったが、裕也の言葉に遮られる。 「確かに僕じゃ大した力添えは出来ないかもしれない。でも、智久さんが兄を助けようとしてくれた様に、僕も智久さんを助けたいんです!!」 そう言う裕也からは、揺るがない決意を感じた。
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