第五章「軌跡の先に…」

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眼下に広がる廃村は、所々に工事の傷跡を残し、その役目を負っていない為か、何処か淋しげに見えた。 「これが"三月村"です」 かつて、この地域は三つの月が見れる村だった。 それは村に存在する二つの湖に、月が映し出された事から由来する。 今は湖が涸れ、その名も飾りに変わってしまっていた。 「この村には悲しい伝説があると聞きます…」 戸塚は目を瞑り、静かに語り始めた。 ―――― 昔。この一帯は、名のある大名が治めていた。 その家の娘が百姓の息子へ恋をする。 この時代、家を栄える為、血縁での結婚が当たり前だった。 叶わない恋と知りながらも、娘は気持ちを抑える事が出来ずにいた。
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