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眼下に広がる廃村は、所々に工事の傷跡を残し、その役目を負っていない為か、何処か淋しげに見えた。
「これが"三月村"です」
かつて、この地域は三つの月が見れる村だった。
それは村に存在する二つの湖に、月が映し出された事から由来する。
今は湖が涸れ、その名も飾りに変わってしまっていた。
「この村には悲しい伝説があると聞きます…」
戸塚は目を瞑り、静かに語り始めた。
――――
昔。この一帯は、名のある大名が治めていた。
その家の娘が百姓の息子へ恋をする。
この時代、家を栄える為、血縁での結婚が当たり前だった。
叶わない恋と知りながらも、娘は気持ちを抑える事が出来ずにいた。
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