第八章「人のカタチ、人の選択」

9/18
前へ
/204ページ
次へ
「………今の聞こえたか?」 室内でパソコンを操作していた智久が言う。 リリーが小さく頷いた。 「戸塚さん達か……?」 智久は立ち上がり、扉の近くに寄る。 耳を近づけるが、周辺に人の気配は感じられない。 「見てくるから待っててくれ」 そう言うと、リリーが腕を掴んだ。 「私も行く……」 暗い部屋に一人だけ取り残された子供の様な。 そんな怯え方をするリリー。 智久は仕方なく頷く。 「………」 扉を開けると、広がるのは先程と変わらぬ通路が見える。 「……戸塚さん?」 智久が小さく声を掛けたが、響くのはダクトからの風音だけだった。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

488人が本棚に入れています
本棚に追加