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「それじゃあ、龍希は何をしてたの?
何か一人でぶつくさ言って空に向かって『暑っちぃよバカヤロー……!』なんて叫んでたけど」
「そこから見てたんですか!?」
「うん」
満面の笑みで彼女は言う。
い、いやあああ!
恥ずかしい!
ってか何で見てたのにスルーしてたの、このお方!?
いや、そりゃ話しかけられたら、話しかけられたで気まずいけど!
「先輩……人が悪いですね……」
「私は龍希の狼狽する顔が見れて満足だよ?」
悪魔かこの人……。
ふぅ……なんか、どっと疲れた。
俺はフェンスに寄りかかる形で座り込む。
なんか移動する気だったが謎の先輩の襲来により気力が消えた。
目の前に立ってた先輩は俺の横に移動し、同様にフェンスに寄りかかって座る。
「で、どうしてここに来たの?」
そんな嬉々として聞かれても……。
「サボりですよ。サボタージュ。俺はこの期末テストに向けて頑張るぞって雰囲気が駄目で逃げて来たんです」
もはや何を言っても言い逃れは出来まい。
俺は正直に話した。
だいたい先輩もサボりだろうに……。
「ふぅん……サボり……」
先輩は透き通るように綺麗な指を自身の頬に当てて、何か考えている。
「サボった理由……。
本当に、
それだけ……?」
予想外の一言に
俺の心臓はドキリとはねた。
いつの間にか先輩はこちらを向いている。
綺麗な顔がすぐ目の前にあって
俺はドキドキするどころか、
恐怖していたと思う。
彼女の瞳が
俺の全てを見透かすようで……
俺は彼女が怖い。
どうしようもなく怖いのに
目を背けることが出来ない。
何故?
まるで目に見えない力が俺を縛るように……
俺は彼女の綺麗で深くて
底の見えない……瞳を
凝視していた。
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