物語の通過点

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「確かに暑いね。 でも汗かかない訳じゃないよ。 ホラ」 そう言って彼女は自身の首元をさす。 確かに彼女の透き通るような肌にはうっすら汗をかいていた。 鎖骨のあたりをしたたる汗を見て、なんか急に体が熱くなって目を背けた。 「? どうしたの?」 「いや、なんでも無いです、断じて!」 「そう……」 彼女は俺から視線を外し空を見る。 俺もつられて空をみる。 やっぱりそこには青く、高い空が広がっていた。 綺麗……と思う。 でもやっぱりこの暑さを思うと憎々しいし、忌々しい。 「龍希はこんな快晴が嫌いなの?」 俺の思考を読んだかのように彼女はそんなことを問いかける。 「嫌い……とは言いませんけど 好きになれません。 暑いし、焼けるし」 「フフフ……。 男子高校生の台詞とは思えないね」 「ほっといてください」 どうやろうが天気なんざ好きにはなれない。 こんな、 こんな快晴になるなら…… どうして 七年前の七夕で快晴にならなかったんだ……。 肝心な時に、輝かない太陽なんか 必要ない。 そんなブラックな思考に支配されている俺を またも彼女は見透かすように凝視し うっすらと笑う。 なんだか居心地が悪いので反逆のつもりでこちらから問いかける。 「先輩は……快晴好きなんですか?」 「ええ、大好きよ」 ニコッと彼女は笑ってそう言った。 その笑顔があまりに眩しすぎて、俺は頬が熱くなるのを感じながら視線を泳がせるしかなかった。 「雨とかは嫌いだけど 太陽は大好き。 やっぱり何事も明るい方がいいもの」 高校生二人の男女が 学校の屋上で お天気トーク。 後から思えばかなり変だったけど 何故かその時は この会話が自然だと思った。
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