第一章「穴る」

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 「おい、宇津美!死体が発見された!行くぞ!」  先輩の言葉で私は走り出した。私の名前は宇津美薫。新米の女刑事だ。  私と先輩は車に飛び乗り、死体が発見されたという現場に到着した。  「ご苦労様です!こちらです。」  出迎えの警官が案内してくれた先には被害者が横たわっていた。一見、外傷は何もない。事件ではなく心臓麻痺等の事故だろうか。  「先輩、外傷もないし現場は争った形跡はありません。事故では無いでしょうか?」  私は数人の警官と話し込んでいた先輩に問い掛けた。  「事故…うん、まぁ…状況だけ見ればそうも見えるな…」  ハッキリ物を言う先輩にしては、やけに奥歯に物が詰まったような言い方をする。  「何か気になりますか?」  「いや…なんというか俺の刑事の勘だ。それに周辺に聞き込みをかけていた警官から気になる話を聞いてな。」  「気になる…話…ですか?」  先輩はどこか口にするのを躊躇うようにしながら先を続けた。  「ああ、実は第一発見者の証言なんだがな………」  そこから先の話は確かに口にするのも馬鹿馬鹿しい話だった。  「先輩、そんな証言取り合うことありません。これは事故ですよ。絶対。」  「いや、すまん。だが、俺はこの現場…何かが隠れているような気がするんだ。目に見えない何かが…。」  馬鹿馬鹿しい話なのに先輩は何かが引っ掛かるようだ。こう見えて先輩は数々の難事件を解決してきた名刑事だ。その名刑事が言うのだから、取り合わない訳にもいかない。まして私は新米なのだ。  「でも、証言を検証するにもどう手を付けていいか…」  「そうだな…。俺の知り合いに頼れる奴が居てな。今までも捜査に何度か協力して貰っている奴なんだが…。お前、そいつの所へ行って協力を頼んでくれないか?」  先輩はそういうと一枚の名刺を差し出した。名刺を目で読んでみる。  《珍歩大学物理学部 准教授 湯原学》  「先輩、物理学の教授ですか?珍歩大の先生ってことは相当優秀な方なんですね。」  「ああ、俺の大学の同期。物理の世界では超が付く程の天才だ。ただ、少し変わり者でな。人のチンポをしゃぶる癖がある。俺達は皆こう言ってたよ、変人カリペロってな。」  「ふーん、カリペロ先生ですかぁ。分かりました、お話してきます。」  こうして私は湯原学、通称カリペロ先生に協力を願う為、珍歩大学へと車を飛ばした。
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