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夜風には、まだ少し冬の匂いが残っていた。
バルコニーって言うにはあまりにも粗末な場所で、俺は少し震えた。
旧サークル棟3階のこの場所は、タバコを吸うために来るお決まりの場所。
手すりにひじをついて目を閉じると、ガタガタと風が窓を鳴らす音と、建物の中の騒ぎ声、麻雀牌を混ぜるジャラジャラという音が、知らない国の音楽に聞こえる。
「ねぇ、火、貸してくれない?」
横から突然声がして、俺は目を開けた。
「…いいよ」
声をかけてきたのは、綺麗な女の子だった。
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