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ストレートの長い黒髪は右に寄せてひとつに結ばれて、白く細いうなじを際立たせる。
タバコに火をつける指も細く、炎の明るさで一瞬だけ映った赤いマニキュアがさらにその印象を引き締めた。
「ありがと」
「どういたしまして……高橋裕子さん」
「え?面識あったっけ?」
「このサークル棟で君のこと知らない奴なんていないよ。
映研の美女は有名人だから」
俺の言葉に彼女は、困ったような、照れたような表情を浮かべた。
それは、大人っぽい彼女にアンバランスな子供っぽい表情だった。
「私も知ってるよ、君のこと。
サークル棟イチのプレイボーイ、天文の坂口樹くん」
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