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「はぁ……はぁ……」
必死に行く宛もなく走る俺。
「どうなってんだよ……!」
頭が回らない。
落ち着こうにもさっきまでの光景が頭から離れない。
辺りは真夜中の時間帯で人が全く歩いておらず、それが俺の恐怖心が増す理由でもあった。
綺麗な満月が走る俺を照らし続ける。
不意に見覚えのある公園を通りかかった。
考えるより先に体が動き、吸い込まれるようにして公園の中に入り込んだ。
ブランコなどがあるその公園のベンチに座り、噎せながらも息を整えようとする。
外灯がチカチカと点滅をする中俺は地面を焦点の合わない目で見つめた。
ハァハァ、と未だ整わない呼吸。
「なんなんだよ……」
頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
「あはは、ここにいたのね♪」
後ろからいきなり笑みを含んだ声をかけられる。
声の主はわかっていて、ソイツから逃げていたのだ。
「ぐっ……」
咄嗟にベンチを立ったが、足を痛めていたことに今気付いた。
俺は力なく地面に倒れる。
「今度こそ逃がさないよ……」
彼女はそう言うと、俺に少しずつ歩み寄ってくる。
逃げようにも、完全に腰を抜かしていた。
彼女の目から生気が感じられず彼女がうかべているその笑顔は、外灯に照らされとても不気味だった。
くそったれが……。
「これでわたしのものだ……アハハハハ!」
狂ったように笑いながら手に持っていた包丁を、俺に向かって振り下ろした。
ザシュッ―――――――――
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