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「そういえば知ってるか?」
ふと思い出したかの様に口を開いた。
ベンチに移動した二人。
だけど二人の間にはまだ微妙な距離がある。
「撫子・・・あんたと同じ名前の花の花言葉」
「撫子のですか?え・・・いえ」
「あんたにピッタリな花言葉だ」
櫻嘩は撫子と若干距離を詰めて、ソッと囁いた。
「撫子の花言葉は『純粋な愛』」
顔をゆっくりと上げると、詰めた為に意外と近い距離に櫻嘩の顔があって二人は一瞬目があった後パッと互いに顔を反らす。
二人の顔は真っ赤になっていて、赤く染まった夕暮れのせいにした。
しばらく気まずい沈黙がおりたが櫻嘩は一度わざとらしく咳をすると、たどたどしく口を開く。
「・・・で・・・さ、お願いあんだけど」
「な・・・なんですか?」
「誰にも言うなよ?俺作家志望なの。それであんたとジイさんの二人の話を書かせてくれないか?」
「私達の・・・ですか?」
意外な言葉に撫子の目が見開かれる。
「ああ。何年かかるかも・・・ましてや作家にすらなれないかもしれない。世間体が大事な母親の為に働きながらだけど書いてみる。そうして完成する事が出来たら・・・俺の作品を一番に見てくれないか?」
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