朝露の章

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「お、筍だ。蕨(ワラビ)も土筆も薇(ゼンマイ)もある!春の山菜の宝庫だな。 あ、たらのめ!蓮華草も!」 柔らかい青草を踏みつつ少女は歩いていた。 濡れた髪が白い頬に張り付き、より幼くみえる 外のものを見る少女の目はキラキラと輝き、宝石のようだ。 雨にぬれた竹林に風がサアッと吹き、清浄な、神聖な風景を作りだしていた。 「む………ここで行き止まりか………?」 視線は立ち塞がるような笹竹の群に向けられていた。 少女の顔が険しくなる,気分を害されて明らかに苛立っていた。 そのまま立ち塞がるそれを眺め、次には行動していた。 立ち塞がるなら無理矢理通ってやると言わんばかりに笹竹の隙間に小さな両手を入れ、グッと左右に押しのけた。 その僅かな間に左足を通し、ついでにペタペタ触って足場を確認した。 ここがもし崖だとしたら洒落にもならない。 「ふっ…………んとっ……ってあぁっ!!」 妙な奇声をあげ、少女は笹竹の向こう側に転げるようにして移動に成功した。
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