朝露の章

10/14
前へ
/73ページ
次へ
(大丈夫、落ち着け!!落ち着いたら泳げるんだから!) 少女が自身に聞かせているにもかかわらず手足は水を掻き、しかしむなしく落ち着くことは出来なかった。 足首に冷たいものが這うように触れた。 驚いた瞬間に空気が気泡となり湖面へと向かっていった。 それが群生していた水藻だと気づいたが、昇っていった空気が戻ることはない 徐々に息苦しさが募り、水が口の中に流れこんだ。 死の影のヒタヒタとよる足音が近づいてくる (私…死ぬのかな……) 死に抗っていた手足の動きが鈍くなってきている 水藻どころか着物も十二分に水を吸い、足枷、手枷になっている。 そして、意識がふっと途切れた。 途切れる前に黄金の獣の目が自分をじっと見ていた気がした。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加