朝露の章

2/14
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
やんちゃな目が注意深くあたりを見渡す 目に映るのはいまだに降り続けている雨に濡れた若葉 同じく濡れている苔むした岩 まだ咲いていない紫陽花の葉の上を這う蝸牛 屋根から落ちてきたであろう雨の雫 僅かに視線を上げれば山岳の峰に霞む霧が見えた なおも目は注意深くあたりを見渡す 蝸牛が違う葉っぱにようやく移ったころ 目は閉じられた 逆に耳を澄ます やはり雨の音しかしない と、思ったらドタバタとせかしい足音が頭上から聞こえてきた 「陽夜様!」 スパンと更に音がする 恐らく障子を開けられたのだろう 小さな白い手がピクリと反応する
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!