朝露の章

5/14
前へ
/73ページ
次へ
カン カン 群生している笹竹を抜けた少女は今、小さな川を渡っていた。 雨が降ったが、あまり増水していない、川の流れは速かった だが少女は濡れた岩の上を危なげなく渡っていく 落ちたら間違いなく溺れる危険があるというのにだ。 右に左に いっそ爽快なほど岩と岩を飛び移っていた。 少女は嬉しそうに目を生き生きと輝かせていた。 雨は何時からか止んでいた 「朝霧(アサギリ)様、申し訳ございませぬ…………。陽夜様が屋敷より逃亡さ………。」 「よい。捨て置け、直に帰ってくるであろう。」 先ほど陽夜を探しにいった、女が一人の男―――彼女の主人に申し訳なさそうにしていた。 だが、主人の言葉を聞くなり唇を噛みしめ眦を吊り上げた。 「陽夜様が心配でないのですか!?」 「お前が心配しているのは、自身の地位だろう。」 図星だったのか、僅かに女が狼狽え視線が宙をさ迷った。 握りしめられていた手で震えた。 「そのようなことなど、ありませぬ!!」 「菜摘(ナツミ)。」 冷ややかな男の視線が苛立たし気に向けられた
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加