序章

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XX年○月△日の厚元代議士の地元事務所の電話は23時になっても鳴りやまなかった。 FAX複合器は抗議の文章が延々と書かれた紙や、ただ一言 怨 と大きく書かれた紙を何十枚も受信し続けて印刷し、ついに用紙もインクも無くなり使えない状態になっていた。 厚元のブログやツイッターは炎上し、HPにはアクセス出来なくなっていた。 公設議員秘書の近藤慶太郎は事務所内の電話やFAXの対応を止めて、事務所の電気を消して外へ出た。 外で待ち構えている報道陣のフラッシュライトを浴び、一斉にかかる質問の声を無視して、黒塗りのセダン車に乗り込みクラクションを鳴らしながらその場を脱出した。 尾行追跡をかわす為、付近の高速ICから高速に乗ると某ハイウェイオアシス(高速の豪華なSAで両方向から入れる)へと向かう。報道陣の車2台とバイク3台しつこく彼を追ってくる。 ハイウェイオアシスの上り側駐車場に車を止め、車を降りた近藤は、一目散に下り側駐車場へと向かう。 下り側に停まっている白い軽ワゴンのドライバーで紺色の作業着を着た男が近藤に気づき小さく手を上げる。 近藤はその車に近づき、出てきたドライバーと車のキーをすれ違い様に交換すると、すぐに軽ワゴンに乗り込んでハイウェイオアシスを逆方向に走って行った。 追って来たマスコミは彼が既に去った事に気付かず、黒塗りセダンの周りで彼が戻って来るのを待っていた。 やがて見慣れない作業着の男が近寄り車に乗り込んでエンジンをかけた為、注視すると男は500mlの発泡酒を飲み干し、シートを倒して眠りについた。 追って来たマスコミは巻かれた事に気が付き、携帯電話で悔しそうに上への報告を行い、ハイウェイオアシスを去って行った。
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