序章

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「どういったご用件でしょうか」 外に出るのを嫌い、人と接触するのを極力避ける雲母が人を呼び付けることは滅多になく、ましてや付き人でない限り目にかかることすら珍しい。 桜李は幼い頃盗賊に家族を殺され、孤児(みなしご)になったところを雲母に拾われた。 だが雲母は、拾ったあとは興味がなくなったように桜李を近づけなかった。 だから桜李は雲母との思い出などなく、これからも接触すらないのだろうと思っていた。 そんな雲母が桜李を呼び出したのだ。 不思議な感情が込み上げる。 少しの期待と少しの不安。 この感情に名をつけることはできないと思った。
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