レンタルダーリン

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「確かに、レンタル料金を受けとったわ。じゃあ、うちの主人12号は外で待たせておくから」  婦人は金を確認すると、ニヤリと笑った。  こうして女は外に出て、先ほどの男と一緒に帰っていった。  その帰り道。男が女にささやいた。 「少し頼みたいんだが、契約期間をもっと延ばしてくれないだろうか?」 「それはあなた次第よ。私を満足させることができれば、もっと延ばしてあげてもいいわよ」 「わかってる。精いっぱいがんばるよ」  こう言いながら、男は心の中で嘆いた。  数年前、彼はあの婦人からいくらかの借金をしていた。それが積もりに積もって、とうとう返せなくなってしまった。そこで婦人に謝りに行ったとき、こう彼女に言われたのだ。 「ほう、返せないのかい。じゃあ私と婚約しな。それでチャラにしてあげるよ。なんでかって? あんたに保険に入ってもらい、その受けとり人を私にするためにさ。なに、心配することはないさ。そう簡単に殺しはしないよ。また婚約についても問題はないさ。今の時代は、一夫多妻制でもあり、一妻多夫制なんだから。気にすることなんてないさ。まあ、嫌なら婚約しなくてもいいよ。その代わりに、あんたの命で借りた金を払ってもらうから」
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