帰宅

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 鍵のかかる音がした。  その音を確認すると、肩で息をしていた少女の口から、ホッと安堵の息が自然と漏れた。それから、少し前のできごとを思いだし、彼女はゾッとした。  真冬のこの時期、日が暮れるスピードは驚くほど速い。午後四時をまわると、急に暗くなりはじめる。そのため、少女の通う高校の部活が終わる午後六時には、あたりは完全に闇に包まれていた。しかも、少女が普段使用している道は住宅や街灯が少ないせいで、一段と闇が濃い。  そのような道を、部活帰りの少女はとぼとぼと歩いていた。その途中、彼女は背後にふと気配を感じた。足をとめ、ゆっくりと振り向く。すると、少し離れたところに、人影がぼんやりと見えた。  その瞬間、彼女の頭に『痴漢』という言葉がすぐに浮かんだ。というのも、最近、このあたりで痴漢が出没しており、今日も高校で注意されたばかりだったからである。  ちょっと、ヤダ。ウソでしょ。少女は人影を、痴漢、と勝手に決めつけていた。ひとり恐怖に襲われ、自然と早足になる。
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